錦部 刀良(にしこり の とら)は、飛鳥時代の人物。姓はなし。讃岐国那賀郡(現在の香川県丸亀市と善通寺市の一部、及び仲多度郡西部)の人。
記録
錦部氏は百済からの渡来人系氏族で、綾や錦などの職成をもって大王に仕えた錦織部(錦部)を管掌するもので、この場合の刀良の場合は、無姓であるため、錦部造(連)の管掌する部民であった。以下の記述とも大いに関係のある粟田真人・坂合部大分・巨勢邑治を長とする大宝元年(701年)の遣唐使には、大録として錦部連道麻呂が加わっている。
『続日本紀』巻第三、文武天皇の慶雲4年5月(707年)の記述によると、刀良ほか2名に、
以上が刀良にまつわる記録のすべてである。なお、粟田真人らが唐から帰国したのは慶雲元年7月(704年)のことである。
刀良の場合も恐らく、持統天皇4年(690年)に帰国した、同じ唐の捕虜だった大伴部博麻(おおともべ の はかま)の場合と同様、軍丁(いくさよろず)であった可能性が高い。青年期に従軍したとすると、かなりの高齢であったことが想像される。
以後の白村江の戦いにおける捕虜の帰還の記録は存在しない。
脚注
参考文献
- 『日本書紀』(五)岩波文庫、1995年
- 『日本書紀』全現代語訳(下)、講談社学術文庫、宇治谷孟:訳、1988年
- 『続日本紀』1 新日本古典文学大系12 岩波書店、1989年
- 『続日本紀』全現代語訳(上)、講談社学術文庫、宇治谷孟:訳、1992年
- 『日本古代氏族事典』【新装版】佐伯有清:編、雄山閣、2015年
- 『白村江―古代東アジア大戦の謎』 、講談社現代新書、遠山美都男、1997年
- 『戦争の日本古代史 好太王碑、白村江から刀伊の入寇まで』倉本一宏、講談社現代新書、2017年
- 香川縣 編『香川縣史』香川県、1909年。NDLJP:766454。
- 香川縣仲多度郡 編『仲多度郡史』香川県仲多度郡、1918年。NDLJP:1085743。
関連項目
- 白村江の戦い
- 土師富杼
- 筑紫薩夜麻
- 氷老人
- 弓削元宝
- 道久
- 韓嶋裟婆
- 布師磐
- 物部薬
- 壬生諸石




